どんな症状なの

 突然の嘔吐で始まることが多く、だいたい1日くらいは、ムカムカが続きます。嘔吐には、2通りのパターンがあって、半日くらいの間に、一気に続けて何回も嘔吐することが多いのですが、1日1〜2回くらいの嘔吐が2〜3日続くこともあります。

 嘔吐に続いて下痢が見られることが多く、酸っぱい臭いのクリーム色をした下痢が見られますが、だんだん水のような下痢になります。下痢は、3〜4日〜1週間くらい続きます。赤ちゃんでは、下痢が長びくこともあります。発熱はあまり見られず、せいぜい1〜2日くらいです。

★.従来は、ロタウイルスによる感染性胃腸炎を、嘔吐下痢症とか白色便性冬季下痢症と呼んでいましたが、最近は、ロタウイルスに限らず、種々のウイルスによる感染性胃腸炎を嘔吐下痢症と呼んでいます。
★.ノロウイルスは、カキや、生水から感染します。近年、老健施設や、保育園での集団発生が目立っています。


 どうすれば治るの


 吐いたらどうしよう

 嘔吐と下痢によって水分が失われます。脱水症状が見られることがありますので、十分な水分補給が必要です。

 最初、嘔吐から始まることが多いのですが、嘔吐も下痢も、体内の悪いウイルスを体外に排出するために見られる体の防衛反応ですので、無理に止めない方が良いともいえます。病院に行って吐き気止めの座薬を入れても、あまり効かなかった経験は誰でもあると思います。急いで嘔吐を止めなくても、時間がたてば自然におさまります。

 つまり、吐いたら飲むなです。吐いてもケロッとしているようなら心配ありません。1回吐いたら、1時間くらいはお腹を休ませて下さい。1時間くらいしたら少量の水分から始めましょう。それでも吐いたら、また1時間待ちましょう。そのうちにおさまってくることが多いです。
 
 しかし、どんどん具合が悪くなるような時、例えば、ぐったりして元気がない。顔色が悪く、うとうとする。口の中や舌が乾いている。尿量が少ない。泣いても涙が出ない。吐物に緑色の嘔吐が見られる。こういう時は脱水が強く、点滴治療などが必要ですので、様子など見ることなく、すぐ、病院を受診しましょう。

 下痢も、同様に体内のウイルスを排出するために見られますので、最初は、あまり強い下痢止めは使わない方がよいです。整腸剤で十分ですが、便に血が混じる時はすぐ受診しましょう。また、1週間以上続く時は、少し腸粘膜が痛んでくることもありますので、やはり、受診しましょう。


 どうやって水分補給するの

 さて、脱水の改善には、適切な水分補給が大切ですが、どんな飲み物が良いでしょう。イオン飲料??ウ〜ン、どうでしょう。

 脱水によって失われるものは、水分だけでなく、電解質も失われます。電解質とは、ナトリウムとか、クロールとかいういもので、体内の水分バランスを保持し、体の調子を整える物質です。ナトリウムはNa、クロールはCl、一緒になるとNaCl、これは塩です。つまり、私たちの体内の水分は水と塩分などが適度なバランスで構成されていますので、脱水の時は単なる水だけではなく、塩分が入った水が必要なのです。

 塩分の吸収をよくするためには少量の糖分があればよいのですが、市販されているイオン飲料の殆どは、塩分が少なく糖分が多くなっています。糖分が多いため、いくら飲んでも、のどが渇き、また、塩分は少なく水だけが多くなるため、ますます、体液のバランスが悪くなり、極端な場合、けいれんなどを引きおこすことがりあります。

 従って、市販されている殆どのイオン飲料は、あまり良くないと言うことになります。では、何がよいかというと、なるべく体液の組成にあったものがよいわけです(当たり前です)。そのような製品は市販されていませんが、おうちで簡単に作ることができます。
 「湯冷まし1リットル+砂糖40g(上白糖大さじ4と1/2杯)+食塩3g(小さじ1/2杯)」でOKです。後はよくかき混ぜて、飲みやすい温度に調整し、果汁で味付けをすれば簡単にできあがりです。これって、ほぼ点滴の内容と同じなんですよ。病院に行けば点滴の粉末(ソリタ顆粒)や、飲む点滴(OS-1)などが処方されますが、おうちでも同じようなものが作れますので、チャレンジしてみて下さい。

 もし、旅先などで急に水分補給が必要になったら、野菜スープや、みそ汁の上澄みでもよいですよ。乳児用イオン飲料(アクアライト、アクアサーナ)は、まずまずとしても、ポ○カ○ス○ット、ア○エ○ア○は、どうもね・・・。一時しのぎとして下さい。


 何を食べたらいいの

 嘔吐がおさまり下痢が続いている時の食事は、以前はとにかく消化によいものが進められましたが、最近は、あまり消化にこだわらなくなってきました。殆ど水のような下痢が1日数回続くような場合は別として、軟便程度でしたら、あまり厳密な食事制限は行いません。

 大まかな目安ですが、乳児の離乳食は少し前の段階に戻す、いつもより軟らかく水分、塩分を少し多めにする。幼児には、消化によいデンプンなどの糖類(うどん、おじやなど)がよいでしょう。肉や、魚も全く食べてはいけないと言うこともありませんが、脂質をすくなくするために、“焼く、炒める”は、さけて、“煮る、蒸す”料理にしましょう。果物は、リンゴがよいです(リンゴジュースはダメ、甘すぎる)。

 あまり、食べない方がよいものは、牛乳、脂肪の多い食品(天ぷら、、ラーメン、中華料理など)。発酵しやすい食品(砂糖が多く含まれている食品、サツマイモ、クリなど)。ミカンのような柑橘系果実。等です。


 以上まとめますと

・嘔吐が続く時は、吐いたら飲むなです。回復するまで待ちましょう。ただし、脱水症状に注意。
水分補給は、塩分、糖分のバランスの良い飲み物を少しずつ与えましょう。ちょっと飲み過ぎるとすぐ吐いちゃいます。
・食事は脂質をを控えめに、消化の良いものを中心に。
・下痢の治療は整腸剤だけで十分。ただし、水様便が頻回に見られる時、便に血が混じる時,、1週間以上続く時は受診。


 幼稚園、保育園、学校はいつから行っていいの

 嘔吐している時は、まずお休みです。下痢もひどい時は休んだ方がよいと思います。どの程度まで回復すればよいかというような基準はありませんが、元気が良く、便の管理(便から移りますので、他の人へ移さないような配慮)ができるなら良いでしょう。
便にふれた場合、徹底して手洗いができるかどうかです。



 補足:
 寒い時期に見られる病気に「腸重責」という病気があります。腸が腸にめり込んでいって腸閉塞(腸が動かなくなること)のため頻回に嘔吐します。放置しておくと命に関わることもあります。嘔吐下痢症では、胃液くらいまでは嘔吐しますが(吐物が黄色)、腸重責では胆汁まで嘔吐しますので、緑色の吐物が見られることがあります。最初は少しわかりにくいこともあります。 
 以前、病院勤務していた頃、「嘔吐下痢症だと思って様子を見ていたけどいつまでたってもはき続ける」といって深夜に受診したお子さんがいましたが、腸重責でした。無事、元気になりましたが、嘔吐下痢症のはやる冬場は腸重責との鑑別が必要なこともあります。嘔吐がなかなかおさまらない場合は、早めに受診しましょう。
       嘔吐下痢症
(感染性胃腸炎、ウイルス性胃腸炎)
 おなかの中にウイルスが入って、吐いたり、下痢をする病気です。冬場に多く、11月頃と2月頃にピークがあります。乳幼児に多いですが、大人もかかります。原因ウイルスは、60〜70%はロタウイルスです。他にノロウイルス、腸管アデノウイルス等です。
 便から移りますが、
下痢が治まっても、1週間くらいは便からウイルスがでていますので、徹底して手を洗いましょう。