アトピーで悩まないように

かかなきゃ治ると言われても、どうしてもかいてしまうのがアトピー性皮膚炎?

 どうしてアトピー性皮膚炎になっちゃうんでしょう。アトピー性皮膚炎は、

@.生まれつき皮膚炎をおこしやすい素因(素質)があり、そこに、
A.生活上のいろいろな悪化誘因が加わって発症する病気です。

 アトピー性皮膚炎のはっきりした原因は、今のところわかっていません。乾燥肌、免疫バランスの
不均衡、遺伝的要因、環境の変化(衣・食・住)、心因性のストレスなど、いくつもの要因が複雑に
絡んでいるものと考えられています。


 皮膚炎をおこしやすい素因とは、→アトピー体質

  アレルギー体質と、
  乾燥肌による皮膚のバリアー障害

  この二つを、アトピー体質といいます。

 生活上のいろいろな悪化誘因とは、→ 衣食住の生活環境と、心身のストレス

 アレルギー的悪化誘因(ダニ、ハウスダスト、食物など)  
 非アレルギー的悪化誘因 (乾燥、発汗、掻爬など)
 心身のストレス 


 図で示しますと、アトピー性皮膚炎というものは、下図のようになります。

アレルギーをおこしやすい体質と、乾燥肌のため皮膚表面の防御が弱く、いろいろな刺激物が体内に入りやすい(これをバリアー障害といいます)という2つの特徴を持っています。(この2つの特徴がアトピー体質と言われるものです)

 このような弱い皮膚にダニ、ハウスダストなどのアレルギー的悪化誘因や、乾燥、発汗などの非アレルギー的悪化誘因が作用し、皮膚炎(炎症)をおこして、赤く、かゆくなるのです。

 また、心身にかかるストレスは直接、私たちの大脳に作用してかゆみをおこすことも知られています。 


 皮膚が、がさがさしてかゆければ、アトピーなの? それとも単なる乾燥肌なの?

 あるお医者さんには、アトピーといわれ、別なお医者さんには、乾燥肌といわれ、いったいどっちなのか悩んだことはないですか。アトピーと乾燥肌を比べると、どちらも乾燥肌であることに違いはないですが、やはり、アトピーの方が、乾燥の度合いは強く、かゆみも強いですし、症状がずっと続きます。でも、実際の診療ではどちらかなと迷うことも多く、厳密に区別することは難しい場合も多々あります。

 アトピー性皮膚炎を診断するのに特別な検査はありません。アトピーは目で見て診断する病気です。診察したお医者さんが、アトピーといったり、乾燥肌といったりするのは、そのお医者さんには、そのようにみえたとしかいえませんが、
 もしかしたら、ものすごくアトピーを心配してくるおかあさんでしたら、「今、アトピーといえば、この患者さんは大いに悩みそうだ」と思えば、やんわり乾燥肌といって、少し経過を見ながら、いつかアトピーと話そうと思っているかもしれませんし、今は乾燥肌かなと思っても、放置すればひどくなりそうな時は、積極的に治療を進める意味でアトピーといっているかもしれません。続けて受診すれば、お医者さんとも気持ちが通じ合い、納得して治療を受けられるようになりますよ。

 ところで、アトピーとアレルギーの違いをご存じですか

アレルギー体質は、食物、ダニ、花粉など特定のものに対しておこる免疫の異常反応です。これに対して、アトピー性皮膚炎の人の血液検査をしますと、いろいろな抗体が検出される場合が多いのですが、全く抗体が見つからない人も多くいます。

 アトピーは、<変わった>とか、<不思議な>というような意味で、たとえば、化繊の下着を着たとたんにかゆくなったりするような過敏な肌であったり、免疫の異常反応だけでは説明できない反応も含んでいます。

 右の図のように、アトピーはアレルギーとアレルギー以外の反応の両者を合わせ持っていると思えばよいでしょう。

 

 アレルギー検査で、どんなことがわかるの 

アトピー性皮膚炎は目で見て診断する病気です。よく、アトピーの血液検査をしてほしいといって来院される方がおりますが、血液検査でわかるのはアトピー性皮膚炎に合併しているアレルギーです。それは、食物であったり、ダニであったり、花粉であったり、いろいろです・・・。

 ところで、アレルギー反応には、1型〜4型まで4種類ありますが、一般的にアレルギー検査という時は、RASTとかCAPという方法で、特異的IGE抗体を調べる1型アレルギーの検査を意味します。

 例えば、気管支喘息や花粉症では、主に1型アレルギーが関与しますので、この検査で、原因抗原がわかることが多いのですが、アトピーの場合は、1型だけでなく、3型や4型も関与していますので、この検査だけでは、直接アトピーの原因がわからないことも多く、合併しているアレルギーの検査ということになります。

 ただ、食物アレルギーによって皮膚炎は悪化する場合も多くありますし、ダニやハウスダストも皮膚炎を悪化させる原因の一つではあります。

 ですから、アトピーでアレルギーの検査をする時は、直接のアトピーの原因を知るのではなく、合併しているアレルギーの検査をして、悪化誘因を知るというふうに考えればよいと思います。


 どんな治療がいいの、特効薬はあるの?

はっきりした原因がわからない現時点では、対症療法(その症状に応じた治療)が基本です。

 ★ 皮膚炎を治す。ステロイド外用剤(軟膏、クリームなど)をうまく使うことが大事です。

 ★ 乾燥肌を保護する。
    皮膚を清潔にして、外部の刺激から保護し、皮膚内に十分な水分を保つこと、
    これを、スキンケアといいます。

 生活上のいろいろな悪化誘因(衣、食、住、)を、できるだけ少なくする。

 ★ 心身にかかるストレスを、できるだけ少なくする。(年長児、成人では特に大切)

☆ 何か特別な治療があるというわけではないのです。!!


 でも、ステロイドは嫌な人もいますよね。

ちょっとぬったらすぐ止めたり、何が悪いんだかわからないけど何となくステロイドは嫌とか、マスコミ報道も結構過激ですからね。

 あたりまえのことですけど、どんな薬でも使い方が悪ければ、良くなるどころか、有害になってしまいます。副作用などでないように、正しい使い方をすれば心配ないですよ。ただ、人によって個人差があるわけですから、ステロイドを使っている時は、きちんと、定期的に受診して皮膚の状態を見せて下さいね。

 ステロイドで問題になっているケースは、<医者は、皮膚を診ないで薬だけ処方している。患者は、受診しないで薬だけ取りに来る>といった場合が殆どです。こうならないようにね。

 ところで、ぬり薬でステロイドというと拒否する人でも、知らないうちに、ステロイドを内服させられていることがあるみたい?。
 セレスタミンとか、ヒスタブロックとか、リンデロンとかいう薬処方されたことないですか?。これ、みんなステロイドです。ぬるより飲む方がはるかに副作用が心配ですよね。こういった薬は普段あまり飲まないようにね。
 

 いつまで続くの・・・。

以前は、成長とともに改善し、殆ど治癒するように言われていましたが、最近は、かなり長期間治療が必要とされる場合も見られます。それでも、症状は軽くなってきますし、ステロイドもあまり使わなくてもすむようになります。“成長とともに改善”ということは概ね真実と思いますが、精神的ストレスが関与する場合は少し注意が必要です。その場合、あまり、自分自身に負担をかけないようにすることが大事です。

 乳児期のアトピーですと、だいたい1才6ヶ月〜2才くらいで、かなりよくなります。それまでの間、いろいろ悩むことが多いと思いますが、へんてこりんなアトピー・ビジネスに引っかからないようにね(馬の油なんかぬっちゃダメだよ)。普通の治療で十分です。といっても赤ちゃんの赤い顔を見ると心配ですよね。わからないことは何でも聞いて下さい。何回同じことを聞いてもいいですよ。お母さん一人で悩まないことです。