診察室便り

 日常診療で感じたこと、最近の話題、メールへのご返事など、医療だけでなく、いろいろな話題にふれたいと思います。

2009年12月31日(木)
大晦日

 今年も余すところあと十時間くらいになりました。いつもの事ながら、無事一年を過ごせたことで、ホッとしています。

 昨日は臨時当番医でしたけど、公表されていないので、新患の患者さんは少なかったですね。いつもの年末なら、ご近所の皆さんもけっこう受診されますけど、今年はあまり見えませんでした。新型インフルエンザも一段落し、冬の定番感染症の嘔吐下痢症(急性胃腸炎)も、今年はもう下火になっています。学校が始まる一月中旬くらいまでは、ゆっくりと過ごせそうです。

 今年一年は、新型インフルエンザに振り回されました。新型ワクチンの優先順位なんて面倒なこともありました。いつも言うようにこの教訓が「次」に活かされるようにしないといけません。「次」とは具体的には、今の新型(豚)が強毒化した場合や、強毒性鳥インフルエンザが、人に感染するようになった場合を言います。弱毒性の豚でこれだけの騒ぎになるんだから、「次」は大変かもしれません。

 今年の締めくくりとして何か気の利いたことを書こうかと思いましたけど、いろんな事がたくさんあって混乱しそうです。昨年は、「八方塞がり」の年でしたけど、今年はけっこう良いこともありました。まだ、これからクリニックへ行って残務整理しなければなりません。明日、新年になったら昨年を振り返って、新しい年の豊富を述べたいと思います。では、良いお年をお迎え下さい。

2009年12月27日(日)
【12月30日 臨時当番医】って、なんだ?

 先週の水曜日、夜間診療所に行って来ました。どうも空調が故障していたようで、最初のうち暖房が入らずとても寒かったです。診察室だけでなく、待合室も事務室も、ぜ〜んぶ寒かったです。早く直すように頼んできましたけど、もう直りましたかね。

 どうもこの日の寒さでちょっと体調を崩したようです。次の日から何となく喉が変な感じで、土曜日にはついに声が出なくなってしまいました。患者さん達からは「先生、大丈夫ですか。」と気を遣って頂きました。ありがとうございます。もう良くなりました。

 12月30日は臨時当番医ですが、臨時当番医なんてあまり聞いたことがないですよね。年末年始は忙しいから、もう一件お手伝いの当番医ができたくらいに思って頂ければよいです。今年初めて試験的に行われることになりました。

 事の経緯は、11月中旬頃だったと思いますが、盛岡市医師会に匿名の投書がありました。内容は、「今年は新型インフルエンザが流行し、大変小児科休日当番医が混み合っています。このぶんでは、ただでさえ混み合う年末はさらに混み合い、大変混乱をきたすと思われますので、年末の当番医を増設して頂けないでしょうか。」というものでした。ごもっともと言えばごもっともですが・・・。

 さっそく、医師会から小児科にどのように対処するか返答を求められました。小児科医全員で話し合ったわけではありませんが、この話題を議論する席に私も同席していましたので、討論に参加することができました。

 いろいろ話し合った結果、「休日当番医が一件では不便を感じることもあるだろう。しかし、盛岡市の小児科医は休日当番医だけではなく、年中無休の夜間診療所(10月からは、土・日・祝日は、小児科医2名勤務)、24時間重症患者入院受け入れの二次救急輪番、と、目一杯の時間外、救急医療に従事している。つまり、盛岡市は、1年365日、いつでも小児科医の診療を受け、いつでも小児科医のいる病院に入院することができる全国でも数少ない地域であること。すでに、小児科医全員がフルタイムで頑張っており、さらに、休日当番医を二件に増やすと言うことは困難と思われる。」でした。

 しかし、年末年始であれば日程を調整すれば可能な医療機関もあるかもしれず、『手あげ方式』(誰彼と指名するのではなく、自主的に臨時当番医をする)にしてみてはどうかという意見が出され、最終的に、今年はこの『手あげ方式』となりました。

 ただし、臨時であり、来年以降定着するものでもありません。さらに、年末年始全てに臨時当番医が可能なわけではありません。また、臨時当番医をする予定であっても体調不良などの事情により休診を余儀なくされた場合に、変わりの臨時当番医を探すことが困難です。と言うことから、(あまり大きな期待を寄せられては大変ということでしょうか?)今年の臨時当番医は広報・新聞などには掲載しないこととし、あくまで正規当番医のお手伝いという形になりました。

 当院は例年12月30日〜1月3日まで、休診していますが、今年はこの話が出る前から、30日まで診療し、12月31日〜1月4日まで休診にしようと思っていましたので、30日の臨時当番医をすることとしました。

 せっかく30日診療するなら、ご近所の方々だけでなく、広い範囲にわたってお知らせしたいと思いましたが、公表されない当番医だとみんなわかりませんよね。これでいいのかなと思いながらも初めてのことですので、【臨時当番医】、まず、やってみましょう。

2009年12月21日(月)
今の主役(流行病)は?

 この頃寒いですね。冬だから寒くて当たり前だけど、昔の盛岡は今よりもっと寒かったですよ。氷点下18度なんて事もありましたね。私は高校生の頃、自転車で通学していました。冬でも殆ど自転車でした。ある日、中の橋を渡る時あまりに風が冷たくて、もう学校に行くのがイヤになって途中で帰ったことがあります。家に戻って自分の部屋で漫画を見ているところを親に見つかって叱られました。当然だね。

 最近、新型インフルエンザも一段落してきました。今の流行病は、嘔吐下痢症ですね。吐いたり、下痢したり、いわゆる、お腹の風邪です。最初、何回か吐いて、それから、下痢が始まるパターンが多いです。インフルエンザと一緒に流行らなくて助かりますよ。

 いくつかの病気が同時に流行すると大変ですよね。季節性のインフルエンザは、まだ、出現していませんね。マスコミ報道では、12月に季節性インフルエンザが見られないのは珍しいなんて言ってましたけど、果たしてそうかな?季節性インフルエンザが年内に流行しだしたのはここ数年です。大体は年明けの学校が始まる1月中旬〜2月にかけて流行がみられることが多いです。今シーズンはいつものパターンに戻りそうですね。

 今年の夏頃は、新型と季節性が一緒になって流行したらどうしようナンテ事も考えましたけど、今のところ、その心配はなさそうですね。

 ところで、何かウイルス性疾患が流行する時、例えば、新型インフルエンザとか、嘔吐下痢症(ノロ、ロタ、アデノ)のようなウイルスが流行する時、他のウイルスが同時に流行することはまずないですね。 

 身近な例では、急性細気管支炎を起こすRSウイルスとインフルエンザウイルスが同時に流行することは殆どありません。今シーズンもRSウイルスが出現して来たのは、新型インフルエンザのピークを過ぎてからです。
 
 ウイルスは我々人類よりも先に地球上に存在していたなんて言われます。幾多の困難を乗り越えて生存しているわけですから、生き延びる術を知っているのかもしれません。お互いに生存権を巡って争わず、あるウイルスが繁殖している時は、他のウイルスはその活動を妨げないように自粛しているのかもしれません。
 
 もしかしたら、インフルエンザ同士でも新型と季節性はお互いに一線を画して、同時に流行しないような仕組みになっているのかもしれませんね。

 新型ワクチンも、大部接種する人たちが増えてきました。もう2回目接種している人たちもたくさんいます。今日発熱で受診した小学生はインフルエンザでしたが、比較的元気で、あまりインフルエンザらしく見えませんでした。多分違うだろうと思いながら検査したら、A(+)でした。今のA(+)は、まだ新型です。この子は2週間前に新型ワクチンを接種していました。1回接種しただけでしたが、ワクチンのおかげで軽かったように思います。これだけで新型ワクチン効果ありと言うのは早計かもしれませんが、期待できそうですね。

 今は嘔吐下痢症のウイルスに主役を譲っている新型インフルエンザですが、いずれまた、流行してくるでしょうから、新型ワクチンは接種しておいた方がいいですよ。国産がなくなれば外国産のワクチンですからね。ちょっと気が進まない人も多いでしょう。

2009年12月14日(月)
インフルエンザワクチンの接種間隔

  12月14日は、赤穂浪士の討ち入りの日ですね。子どもの頃に何度も祖父から忠臣蔵の話を聞かされました。ここには『日本人の心』があると思います。現代の日本人が忘れてしまった道徳心があると思います。

 忠臣蔵には数々の名場面がありますよね。赤垣源蔵の「徳利の別れ」、大石内蔵助の東下り、内蔵助と遥泉院の「南部坂 雪の別れ」、土屋主税が塀ぎわに提灯を灯す場面、義商・天野屋利兵衛の「天野屋利兵衛は男でござる!」の名セリフ・・・。まだまだあるよね。(と言っても、知ってる人あまりいないかな?)後世になって創作された名場面もあるようですが、子どもの頃から、感動して何度もテレビで見てました。社会人になってからもほぼ毎年、12月14日はビデオを借りてきて見てましたね。今日も古いビデオを見ました。ウンウン、いつもながら感激します。「ちょっと、先生どうかしたんじゃない?」ナンテ思われるかもしれませんけど、いつもと同じですよ。みんなも是非忠臣蔵を見て感動して下さい。

 さて、プライベートな話はこのくらいにして、土曜日は夜間診療所、日曜日は休日当番医と忙しい週末でした。ちょっと前までは、インフルエンザの患者さん達が多かったですけど、今は、吐いたり、下痢したりという、急性胃腸炎が流行っていますね。ノロ、ロタ、その他の腸管感染性ウイルスで発症しますけど、軽症な子が多いです。

 急性胃腸炎ほどではないですけど、オタフクや水痘もけっこうみられますね。ところで、インフルエンザワクチンの接種間隔は、1〜4週間ですが、途中でオタフクや水痘に罹ったりすると1回目と2回目の期間が長くあいてしまいますね。そんな時ちょっと困ってしまいます。今日はそのようなワクチンの接種間隔についてのお便りをいただきましたのでご紹介したいと思います。

S.Tさんからのお便り


 いつもお世話になっております。

 そして診察お疲れ様です。新型インフルエンザ、盛岡市は少し減少傾向のようですネ!まだまだ気は抜けませんが、これから冬休みにはいるので、この状態が少しは続くのかなあと、そしてまた冬休み明け後に、新型と季節性が流行してくるのかなあと、勝手に思っています。

 また、私が勝手に感じていること。。。この新型インフルエンザ、南日本のほうが北国の岩手より流行していますよね?何故だろう?東北より暖かい気候だけど、もしかして東北より空気が乾燥しているのな?なんて。。。

 さて、またご相談させていただきます。
<<2回目の新型インフルエンザの日程>>についてです。

 1回目の予防接種は11/18に接種しました。2回目ですが1か月後ということで12/17に予約をしています。
 ですが、子供の友人が流行耳下腺炎と水痘にかかってしまいました。その友人はどちらも同じ子で流行耳下腺炎が治って、一緒に遊べるようになったと思ったら、今度は水痘ということで、なにも続けざまにかからなくても!?と思い、ちょっと気の毒だなと感じています。

 詳細を下記に記載いたします。

@ 流行耳下腺炎の潜伏期間について(一般には2〜3週間ですよね。)

(1) 11/21に3時間程度、11/24に1時間ほど遊びました。友人は咳をけっこうしていました。

(2) 11/25以降に発症したと思われます。次に会ったのは12/8日でした。この時、流行耳下腺炎にかかっていたと聞かされました。

A 水痘の潜伏期間について(こちらも一般には2〜3週間ですよね)

(1) 12/8に1時間ほど遊びました。友人はまだ咳がのこっていました。

(2) 12/11の夜に発症し12/12に水痘と診断されたようです。(来週また遊ぶ予定がありまして連絡がありました。)

 以上のことから、12/16時点において@の流行耳下腺炎につきましては発症しなければ23日経過、Aの水痘につきましては8日経過です。ただ、水痘に関して発症1日〜2日前から感染力があるとも聞きます。そうすると、息子はぎりぎり感染していないかも?と考えたりして。。。

 ちなみに息子についてですが、H20/4月に水痘、H21/4月に流行耳下腺炎の予防接種済です。

 そこで、2つご相談させていただきます。

1、先生は2回目の接種をずらしたほうがよいと考えますでしょうか?その場合、12/24以降であれば接種可能でしょうか?

2、2回目の新型インフルエンザワクチン接種の適用期間はどれくらいなのでしょうか?水痘を発症してしまった場合、1ヶ月位接種を控えなければならないと思いますが、その場合も接種可能でしょうか?、

 お手すきの時で構いませんので回答の程よろしくお願い致します。

 それでは、よろしくお願いします。




 お便りありがとうございます
 昨日は休日当番医、一昨日は夜間診療所と、少し、バタバタしていましたので、ご返事が遅れてしまいました。

 ウイルス性疾患に罹った場合、その感染したウイルスの影響を受けて、他の病気の予防接種の効果が十分に見られない事があります。今回に関していえば、オタフクや水痘に罹った場合、インフルエンザの予防接種を受けてもインフルエンザの抗体が十分産生されないことがあります。そのため、ウイルス性疾患にかかった場合は、他の予防接種を受けるまで少し間隔をあけます。

 オタフクや水痘でしたら、免疫の回復にもよりますが、治癒後、2〜4週間以上あけるのが一般的です。ただ、軽症に経過する場合もありますので、一般状態をみて、対象疾患(この場合は、インフルエンザ)に対する予防接種の重要性を考慮して決めます。

 はっきり罹ったあとはこの様にわかりやすいですが、息子さんのように、潜伏期間にあるかもしれないと言う場合は、ちょっと難しいですね。仮にオタフクや水痘に罹っているとして、それらのウイルスが体内で増殖する時期にインフルエンザワクチンを接種すれば、効果が不十分かもしれませんが、全く効果がないと言うわけではありません。

 もし罹ったと仮定して、潜伏期間が過ぎた後(大体3週間後)に接種すれば、その心配はしなくて済みますが、今度は1回目からの期間が少しあいてしまいますよね。ウ〜ン、困りましたね。とはいえ、こういう事はよくあります。

 現実的には、周囲のインフルエンザの流行状況、本人の健康状態、などを考慮して考えますが、息子さんの場合、幸い、どちらも予防接種をしていますので、罹ったとしても軽症で済むと思います。

 結論として、できるだけ、予定どおり4週間間隔で接種した方がよいと思います。新型インフルエンザの流行は下火になったとはいえ、毎日患者さんを診ています。今後もしばらく小流行は続くと思います。

 また、オタフクや水痘に感染していたとしても、既に予防接種をしていますので、発症しないか、あるいは自然感染よりも軽症で済むと思われますから、インフルエンザワクチンに対する影響も少ないと思います。

 一般的にインフルエンザワクチンは1〜4週間間隔で接種しますが、できれ3〜4週間間隔で接種した方が効果はあります。4週間以上あけた場合、どのくらいまで有効かというようなデータはありませんので、はっきり申し上げられませんが、私は次のように考えております。

 成人ではインフルエンザワクチンは1回接種です。小児では成人の接種量を2回に分け、さらに年令によって量を加減して2回接種しています。昔、インフルエンザワクチンによる副作用として発熱が多かったので2回に分けたといわれていますが、真偽の程は確かではありません。
 現行のワクチンは昔のワクチンとは製造法も異なり、発熱も殆ど見られませんので、いつまでも2回に分けて接種する意味がないように思っています。

 少し話が脱線しましたが、成人が1回接種で1シーズン(5〜6ヶ月)抗体価が持続するわけですから、小児でも1回接種で抗体価は結構長く続いていると考えて良いと思います。ただ、その値が低いために2回目の追加接種が必要となります。
 
 ですから、4週間過ぎても2回目接種の効果がなくなるということはなく、その場合、できるだけ早めに接種されればよいと思います。

2009年12月7日(月)
突然ですが、NHKです。

 今日から、健康な1才〜小学校3年生の新型ワクチン接種が始まりました。何とか、基礎疾患を持つ病弱なお子さん達の1回目接種が済んで、さあ、これからが大変と思っているところです。

 基礎疾患云々はともかく、気管支喘息を持つお子さん達が、大部分でしたから、ある程度人数は掌握できましたので、必要な本数をそろえる事ができました。

 問題はこれからです。健康なお子さん達が果たして何人くらい接種しに来るのか?皆目見当がつきません。本来なら、季節性ワクチンと同じくらいの本数をそろえればいいわけですが、ご存知のように“足りない”状況です。さしあたり、基礎疾患を持つお子さん達の5〜6倍の本数を請求してみましたが、実際に納入されたのははるかに少ない本数でした。当然だよね。どこの医療機関でも足りないんだからしかたないですね。

 接種開始初日の今日は、朝から、ワクチン接種しに来るお子さん多かったですね。当院かかりつけのお子さん達だけでなく、初めて受診されるお子さん達も多かったですよ。「かかりつけの先生の所では接種してくれないんですか」と、おたずねすると、殆どの親御さんは、「予約制で順番が遅い」とか、「いつになるかわからない」と言うことでした。
 
 私も以前は季節性ワクチンを予約制で接種していましたが、現在は来院順に接種しています。予約制も来院順も一長一短ですから、一概にどちらがよいとは言えません。
 
 予約制は十分な数があるのなら、ゆっくり自分の番を待っていればいいですけど、数が限られている新型では厳密に何人接種できるかどうかわかりませんから、予約順が遅い方の人たちは心配になりますよね。新型の予約制はちょっと不便かもしれません。

 午前の外来が始まって間もない頃、NHKから、「新型ワクチンの取材に来院したい。」との連絡がありました。さて?何も聞いていないな。どうもマスコミは苦手だから、「医師会を通してからにして下さい」と、ご返事しましたら、既に医師会の許可は取ってあるとのこと、ウ〜ン、いろいろお話しすると、どんどん本音がでて、イヤだなと思いながらも、OKと言うことにしました。

 午後2時にNKKの方、3人いらっしゃいましたよ。実際にワクチン接種する所を撮影したいとのことでした。接種されるお子さんの親御さんから許可を得て、それから撮影開始です。いつもしていることですけど、カメラが回っていると何となく緊張しますね。どことなく、言葉使いも丁寧になりますね。別に自分は映っていないと思うけど、なんとなく見られているような気がしますっけよ。

 3〜4組接種した後に、では、「ちょっと先生にお話を伺わせて下さい。」だと!「エ〜、そんなの聞いてないよ。接種しているところを映すだけと言ったじゃないか〜」しかし、そうも言ってられず、インタビユーに応じましたよ。ワクチンの接種間隔とか、ワクチンの有効性とか、マッ、当たり障りのない話でしたので、一般的なお話しで済みました。
 
 もしも、「現在のような混乱状況を、どのようにお考えですか」ナンテ事を聞かれたら、もう言いたい放題になっていたかもしれませんね。少し、当てがはずれたというか、ホッとしたというか。でも、いつも書いてるような調子で話したら、絶対、ボツになって放送されないでしょうね。

 この様子は今日の午後6時10分と8時45分のNHKニュースで放送されたそうです。その時間、私はまだ、院内で雑用していましたので、見ることができませんでした。後で家族に聞いたら、「ちゃんと、どもらないで話してたよ。」とのこと。「内容はわかったのかね?」と思いながらも、まず無難に済みました。

 もう10年近く前になりますが、インフルエンザの流行期に、テレビの取材を受けたことがあります。この時はIBCか、テレビ岩手だったと思いますけど、やはり、インフルエンザワクチン(当然、季節性です)が不足して、どこにも殆どなくなった頃でした。
 
 その貴重なワクチンを取材したいと言うことでした。この時は放送局の方がジックリとワクチンのバイアルを見ながら、「これが、インフルエンザワクチンですか・・・。」と感慨深げにつぶやいて、しっかりとカメラの納めて帰られました。私のコメント何もなし、テレビに映ったのは当院のワクチン1バイアル・・・。と言う取材でした。なんだったんだろね。
 
 今度取材を受けるのは、また、10年後くらいでしょうかね。その頃のインフルエンザはどうなってるんでしょう。「昔はワクチンが足りなくて困ったけど、今は・・・。」てな事になってるのかな。

 今日1日で新型ワクチンを50人くらいに接種しました。毎日、こんなにたくさんのお子さん達が来院されると大変ではありますが、できるだけ、多くのお子さん達に、早めに接種したいと思っています。

2009年12月4日(金)
再び、ワクチンフィーバー

 今年も師走の月となりました。いつにも増して、新型インフルエンザで大忙しと思いきや?11月中旬以降、新型の流行は小康状態です。12月になったらまた少し増えてきたかな。と言うくらいの状況で、この頃、12月にしてはヒマ(?)な外来です。

 なんと言っても10月〜11月上旬の忙しさは異常でしたからね。もし、今も10月並みの忙しさだったら、多分、疲労で倒れていると思いますよ。

 季節性インフルエンザは、B型はもう出現しています。当院でも何人か診てます。幸い、まだ、A型は出現していません。

 新型が中休み、季節性はまだ、お休み中。この平穏な時期にサッサと、ワクチンを接種しましょう。と言っても、季節性はそろそろ底をついてきましたし、新型はご存知の通り、数が少なくて大変です。

 12月7日から、新型の接種対象者が増えますが、現在、どのような人が接種対象者になっているか、知っていますか。医療機関に来た通知は次のようになっています。この通り掲示して、果たして何人の人がわかるでしょうかね

・既に対象者になっているグループ
@.1才〜小学校3年生の基礎疾患ありの最優先グループの2回目
A.1才〜中学校3年生の基礎疾患ありの最優先以外グループ
B.小学校4年生〜大人の基礎疾患ありの最優先グループ

・12月7日から新たに対象者になるグループ
C.高校1年生〜大人の基礎疾患ありの最優先以外グループ
D.基礎疾患のない1才〜小学校3年生

 わかりますか?わからないですね。理解しにくいです。そこで、当院では、簡明に(したつもりですけど、やっぱりわかりにくいかな?)以下のようにしてみました。

@.健康な1才〜小学校3年生
A.病気がちな小学校4年生〜大人(中学生・高校生を含む) 

 どうですか。わかりやすいでしょう?そうでもないかな。

 ここ2〜3日、新型ワクチンの問い合わせが多いです。決して十分な数があるわけではありませんが、できるだけ多くの人に接種してあげたいです。当院かかりつけでない方からもたくさん問い合わせが来ています。

 ご存知の通り、当院では待ち時間短縮のために予約制をとっていますが、初めての方は、時間予約と、ワクチン予約を混同してしまうようです。つまり、時間予約すれば、ワクチン予約もしたと思ってしまうようです。ワクチンは来院順に接種していますので、時間予約で、確約することはできません。

 そんなわけで、新患の方にはわかりやすく、水曜日の予防接種の時間に受診するようにお勧めしています。そうしたら、「その日は朝から並ばなくても大丈夫ですか」なんて言うお電話がありました。ウ〜ン?なんぼなんでも「そこまでしなくても大丈夫ですよ」とはお伝えしましたが、来週からのワクチンフィーバーが怖くなってきました。

2009年11月25日(水)
気管支喘息とインフルエンザ

 22日(日)、23日(月)と二日続けて夜間診療所に勤務してきました。連休はあって無いようなものでした。10月から、土・日・祝日は小児科医二人体制で診療しています。一人は正規の勤務で7時〜11時まで、もう一人は手伝いという形で、原則7時〜9時(混み合ってる時は時間延長)です。22日(日)は、お手伝いで川久保病院の蒔苗先生と、23日(月)は、正規の勤務で吉田小児科の吉田研一先生と一緒でした。二人いると何となく心強いですね。

 インフルエンザ流行期は、しばらくこの体制が続きますが、22日(日)は80人、23日(月)は56人と、少し夜間を受診する患者さんも少なくなってきました。でも、ときどき重症な患者さんもいますので、まだまだ要注意です。

 インフルエンザ同様、気管支喘息についても最近よくメールをいただきます。初めて喘息発作を起こしたお子さんの場合、発作の意味がわかりにくいかもしれませんね。忙しい外来では十分なご説明になっていないかもしれません。質問のお便りをいただければ、ご不明な点についてお話しできますので、ご遠慮せずにメールして下さい。
(公開しているメールは、公開の承諾を頂いたものだけです。ご本人の承諾がなければ公開しませんので、ご安心してメール下さい)

S.Tさんからのお便り


 いつもお世話になっております。N・Aの母です。

 先日、喘息についてメールをいただけるとお聞きしました。お忙しいところ恐縮ですが、お時間のあるときでかまいませんのでよろしくお願いいたします。




 お便りありがとうございます

 先日のご質問は
@.予防法
A.発作というものが、イマイチわからない(いつもカゼからの延長なので)
B.新型、季節性インフルエンザと気管支喘息との関係
C.小児喘息と大人の喘息(成人喘息)との違い
 
 だったと思います。医学書をみるといろんな事が書いてありますので、混乱してしまいますよね。
気管支喘息については、ホームページのアレルギーのお話しに、気管支喘息喘息発作と薬として掲載しています。

@.予防法については、まず、こちらをご覧になって下さい。

A.発作というものが、イマイチわからない(いつもカゼからの延長なので)
 
 気管支が収縮し狭くなる。→空気が通りにくくなる。→苦しくなる。これが喘息発作です。
 狭くなった気管支を空気が通るたびに、「ゼイゼイ、ヒューヒュー」という音が聞こえます。この「ゼイゼイ、ヒューヒュー」が、喘鳴です。
 
 呼吸の苦しさの段階は、はじめ、『少し肩で息をする』ように見えます。この時、『背中に手を当てたり、耳を当てるとゼイゼイ』した音がわかります。もう少し苦しくなると、次第に、『胸がペコペコ』し、『さらに苦しくなると喉仏のあたりまでペコペコ』してきます。苦しくて横になれませんので、座った状態でこの様な呼吸になります。

 これは、典型的な場合ですが、「ゼイゼイ、ヒューヒュー(喘鳴)」が、あまり聴かれない場合もあります。Nくんの場合、(いつもカゼからの延長なので)とありますので、「ゼイゼイ、ヒューヒュー」が、はっきりしないのかもしれません。

 喘息は概ね喘鳴を伴いますが、喘鳴がはっきりしない場合もあります。気管支の周囲には気管支平滑筋という筋肉が付いていますが、この筋肉が収縮すると気管支が狭くなり、「ゼイゼイ、ヒューヒュー」が聴かれます。

 この筋肉があまり強く収縮しないと、「ゼイゼイ、ヒューヒュー」は、はっきりしないで、「苦しそうな咳」と言うことになります。咳喘息とか、アレルギー性気管支炎とか、いろいろな言い方がありますが、わかりやすく言えば、気管支平滑筋の収縮の強弱によって、「ゼイゼイ、ヒューヒュー」〜「咳」の症状が、段階的にみられると思えばよいでしょう。

 では、カゼの咳と喘息の咳の違いはというと、副鼻腔炎(蓄膿症)などでも咳は出ますが、それはさておき、カゼと喘息に限って咳の違いを言えば、【カゼの咳は、ある程度悪くなってだんだん良くなっていく。】これに対して、【喘息の咳は、あまり悪くならないけど、長々と続き、一定の条件(深夜、運動時、冷気、などなど)でひどくなる事が多い。】と、思えばいいでしょう。
 
 Nくんは、カゼをひいた後に咳が長引いているようですので、副鼻腔炎などがなければ、気道過敏性が亢進していると思って良いでしょう。


B.新型、季節性インフルエンザと気管支喘息との関係

 どちらも喘息を悪化させます。季節性は直接肺に浸潤して肺炎を起こすことは少ないです。インフルエンザに罹って体力が弱った状態で、インフルエンザ以外のウイルスや細菌によって肺炎を併発することが多く、高齢者によく見られます。

 これに対して、新型は直接、肺胞(汚い空気ときれいな空気を交換する組織)に障害を与えますので、季節性とは比較にならないくらい重症になります。圧倒的に小児に多く、特に、喘息のあるお子さんは要注意です。

 最近まで、新型は軽症な小・中学生が多かったのですが、先週くらいから保育園・幼稚園児が増えてきました。先週は1日1〜2人くらい重症な気管支喘息発作を伴った新型インフルエンザのお子さんを入院紹介しました。皆、保育園・幼稚園児です。

 発作予防治療中でも、この様な重篤な発作を起こしてきますので、新型の怖さを実感しています。今まで、平穏無事な新型でしたが、今後は、保育園・幼稚園児の重症者に要注意と思っています。
 新型ワクチンは、気管支喘息を持っているお子さんには、是非接種して頂きたいと思っています。


C.小児喘息と大人の喘息(成人喘息)との違い

 基本的には同じです。成人喘息の50%弱が小児喘息の経験者といわれています。この人達は、子どもの頃に喘息があったけど、成長とともに治った(らしい?)と言われた人たちが、大人になってまた喘息を発症した人たちです。厳密には治っていなかったと言うことです。残りの50%強は成人になってから初めて発作を起こして診断された人たちです。

 小児喘息は、まだ、あまり、発作を起こしていませんので、気管支が汚れっぱなしという事はなく、十分治癒が期待できます。これに対して、成人喘息は気管支の汚れが著しく、ほぼ一生予防薬が必要な場合が多いです。

 では、小児喘息は治るのか?と言うと、難しい問題です。よく小児喘息は治りやすいと言われますが、本当に治ってしまうのかどうかはっきり解っているわけではありません。治癒の意味を、「一生薬を使わなくても良い状態」と考えると、残念ながら現代の医学では、喘息に対して治癒という言葉は使い難いです。一度治まった気道過敏性が、いつまた、現れるかわからないからです。

 しかし、発作のない状態が長く続けば、気道過敏性は改善していきますので、とにかく発作のない状態を長く続くように治療していかなければなりません。ただし、それは一生薬が必要な成人とは違って、ある程度良くなったら休薬します。そして様子をみていきます。再び症状が見られれば治療を再開します。この繰り返しになりますが、全く症状が治まって成人になっても発作を起こさない人たちも多くいます。この人達もいつか再発するかもしれませんが、このまま、一生発作を起こさないかもしれません。

 私は、小児も成人も含めて、喘息の治癒とは、「継続的治療を必要とせずに、日常生活に支障をきたさない状態」と考えています。ときどき薬が必要な時はあっても長く続けることなく、日常生活を送ることが出来れば、一応、治癒としてよいと思います。

 そのためには、今、小児期の治療をしっかりと続けることが大事です。小児喘息の治療目標は「発作が全くない状態」です。今だけよければよいというのではなく、将来、大人になってから、喘息で苦しまないために、今、治療していると思って下さい。

 平均して月1回以上の発作があれば治療が必要です。また、先ほどお話した一定の条件で症状(咳・喘鳴)が見られる場合も治療が必要です。

2009年11月22日(日)
やっぱり怖い新型

 昨日は、滝沢のおじさん宅に、13名の親戚が集まり、盛大?な「イモの子会」で、楽しんできました。東京から来た従姉妹達とは、十年ぶりくらいの再会でしたが、あまり変わっていませんね。本当はお互いにすご〜く年取ったんだけどね。なのに、「若い、若い」を連発するのは、そうありたいから?

 久しぶりにみんな集まるというので、吉田家の家系図を作って持っていきました。大体のことはわかっているけど、細かいところまではよく知られていないようですので、この際、いい機会だからと思って作ってみましたよ。

 子どもの頃、小学校の社会の授業で、「みんなのご先祖様は何をしていたか調べてきなさい」と言う宿題がありました。さっそく祖父に聞いてみましたら、「うちのご先祖様は南部家の家老だった」と言われ、(ウソに決まってるけど、この時は真剣にそう思いましたよ)うちはスゴイモンだなと思いながら、次の日学校で、友達に「オレのうちは南部家の家老だったんだとよ」と、言ったら、「オレのうちもそうだって言ってた。」「おらも、んだ」【南部の方言で、おら=自分のこと、んだ=そうだ(肯定の意味)つまり、「自分のうちもそうだ」と訳します。】な〜んだ、みんな家老じゃないか、こりゃみんなウソだな。と、その時わかりました。私の実家は米屋ですし、友達も、八百屋、魚屋、大工とか、まず、お侍さんとは縁がないでしょうね。でも一晩だけどなんかとても誇らしい気持ちになりましたよ。
 
 さて、本当のご先祖様はというと、自分から見て高祖父(曾曾祖父)(ひいひいじいちゃん)まではわかりました。高祖父は、文政3年3月8日(1820年)生まれでした。そこから延々と家系図を作りましたよ。みんなで、「誰々が、ア〜だ。コ〜だ。」と、昔話に花を咲かせていました。作った甲斐があります。

 今日は、夜間診療所に行って来ました。本日はお手伝いで午後9時まで診察してきました。相変わらず、インフルエンザいますね。朝から熱を上げて近くの診療所で診てもらったという患者さんのお話「私達(両親)は、絶対インフルエンザだと思うけど、診察した医者は検査が陰性(−)だから、様子をみると言って、薬をだしてくれなかった。こんなに悪いのに・・・。」と、ご両親で鬼気迫る語気で詰め寄られました。いつも言ってるように、「顔見りゃ、インフルエンザかどうかわかるよ。検査なんかドンでもいいんだ。この子はインフルエンザなんだ。」と話したら、急に明るい顔になりましたっけ。インフルエンザになってうれしいのかね?

 インフルエンザは少なくなりましたよ。先々週から大部少なくなってきましたけど、先週後半くらいからまた少し増えてきましたね、今度は保育園・幼稚園が目立ってきました。先週は数こそ少ないものの、【重症な気管支喘息発作〜呼吸不全】が目立ちました。1日1人〜2人くらい、入院紹介しました。皆、気管支喘息治療中の子ばかりです。そのうち1人は、紹介先の病院で急速に呼吸状態が悪化し人工呼吸器を要する状態になりました。

 もう一段落したかなと思っていましたが、今になって、重症者が増えてきています。それも保育園・幼稚園が目立ちます。「新型は軽い」確かにそうですが、『気管支喘息があったり、ゼロゼロしやすいお子さんは要注意』です。早く、新型ワクチンを接種に来て下さい。

 明日はフルタイムの夜間診療所です。あまり重症なお子さんが来なければいいです。

2009年11月18日(水)
今度は、「タミフル ドライシロップが足りない」だと!?

 新型ワクチンはどんどん接種時期が早まっているようですね。そろそろ、「子どもは、病気持ちでも、健康でも、誰でも接種?」に、なりそうですけど、どうかな。最終的には知事の英断でしょうね。達増さん期待してるよ。

 ところで、今度はタミフル(ドライシロップ)が足りなくなるみたいですね。新型に備えて国家備蓄していたんじゃなかったのかな?期限切れを心配してあまりたくさん用意していなかったのかな?

 ワクチンも足りない。薬も足りない。弱毒性の豚インフルエンザでこれじゃ、強毒性の鳥インフルエンザの時はどうすんのさ?ナンテ、言ったところでしかたないですね。現状をふまえて対策を講じなければなりません。

 新聞報道では、カプセルをばらして細粒で飲ませることは出来るが、とても苦くて子どもは飲めそうにないと、ありました。これまた、ごもっとも。カプセルから取り出したタミフルはズゴ〜クまずいよ。じゃ、どうするのと言うことになるけど、タミフルという薬は昔はなかったんですよ。知ってるかな。「インフルエンザといえばタミフル」という具合に、ズ〜ト昔からあると思ってる人たちも多いですからね。

 カプセルは2001年2月、ドライシロップは 2002年7月から、販売されました。それまではなかったんですよ。だから、インフルエンザに罹ると、みんな、ヒイヒイ言いながら、自然に治るまでガマンしていました。スゴ〜ク大変な時代だったんだよ〜。

 タミフルのカプセルは、始めは成人にしか処方できませんでしたが、とても素晴らしい効き目でしたので、早く子ども用のドライシロップが出来ればいいと思いました。
 2001年〜2002年のシーズンでは、まだドライシロップは発売されていませんでしたが、カプセルの効果を目の当たりに見てましたので、何とか、子どもにもタミフルを飲ませることが出来ないものかと考えていました。
 そんな時、東京の友人から、関東や、関西では、カプセルをばらして子どもに処方しているという話を聞きました。味は悪いがとても効くと言うことでしたので、早速、私もカプセルをばらして飲んでみましたが、ホントにまずい。こりゃ子どもに飲ませるのは無理かなとも思いましたが、友人曰く、「これを飲めばたちどころに熱が下がって、インフルエンザが治る。良薬は口に苦しだ。」と言えば、殆どの保護者は何とか飲ませるんだそうです。そして、「先生の言うとおりすぐ熱が下がりました。ありがとうございます。」と感謝感激の連続だと言ってました。というわけで、私も処方しましたよ。カプセルばらして、味を付けたり、付けなかったり・・・。

 初めて処方したお子さんは幼稚園児でした。お父さんが一緒でした。タミフルの効果のこと、来シーズンにはドライシロップが発売になるが今はカプセルしかないこと、効果は期待できるが味がまずいこと。などなど、なんと言っても初めてのことでしたので、気になって翌日様子を聞いてみましたら、「具合が悪かったせいか、味は気にならないようで、キチンと薬は飲んだ。今日はもう熱が下がって元気に幼稚園に行った」とのこと、ドヒャー!そんなに効くのか〜。まずくても飲めるジャン!と、すっかり自信を持って、このシーズンは殆どのお子さんにタミフルカプセルをばらして処方しました。もう記憶もあやふやですが、飲みにくいとは言うものの、全く飲めないお子さんはいなかったと思います。
 
 このシーズンはあまり大きな流行ではありませんでしたので、話題にはなりませんでしたが、多分、岩手県で初めて子どもにタミフルを使用したのは、それもカプセルをばらして処方したのは自分だと思っています。(ちょっと自慢かな?)

 ですから、今日の新聞報道をみると、「とても苦くて子どもは飲めそうにない」だと、「ぜいたく言うなよな。昔はインフルエンザに効く薬は何もなかったんだろ。もう忘れたのかね?」といいたくなるけど、あれから、10年近く経ちました。当時の親御さんは、これしかないと思って飲ませてくれましたが、今の親御さん達はどうかな?ドライシロップに慣れちゃいましたからね。世の中、便利になればなるほど、それ以上のものを期待しますよね。まず、逆はない。元にはなかなか戻れませんモンね。

 でも、幸い新型はタミフルの効きがとても良いですので、吐き出しながら(?)も、2〜3回飲めば治りそうです。「カプセルばらしタミフル」が出回ると、内服期間は今の5日間から大幅に短縮し、中途半端に治った子たちから、感染が広がっていくようになるかもしれません。

 今のところ、当院のドライシロップは十分ありますが、いずれなくなるでしょう。そうしたら久々にカプセルをばらして処方します。いろいろ味は工夫しますが、まずい事には変わりありません。「これを飲めばたちどころに熱が下がってインフルエンザが治る。良薬は口に苦しだ。」は、今は昔の話でしょうね。それどころか、「先生の言うとおり、すぐ熱が下がりました。ありがとうございます。」ナンテ事はなく、「先生の言うとおり、ホントにまずい薬ですね。何とかしてちょうだい」と、苦言をいただくことになりそうです。
 もしインフルエンザに罹ったら、味の悪さに覚悟を決めて「カプセルばらしタミフル」を飲みましょう。

2009年11月16日(月)
富良野市の話

 先週は、久しぶりに外来も混み合わず、ゆっくり診療できました。気分的にも少し余裕ができましたので、(土)、(日)と、東京で開催されたアレルギーの講演会に行って来ました。いくら、インフルエンザで忙しくても、専門分野のお勉強もしなくちゃね。

 東北新幹線が盛岡まで開通したのは昭和57年6月23日だったと思います。そのころ私は弘前大学にいましたが、学会で東京へ行く時はとても時間がかかっていました。新幹線が出来てからは便利になりましたが、当時の東北新幹線は盛岡−大宮停まりでしたので、弘前〜青森〜盛岡〜大宮〜東京と、3回乗り換えてやっと東京に着きました。それでもすごく速くなったと感じましたね。いつも自由席だったから、盛岡駅で青森からの特急「はつかり」から降りると、新幹線のホームまで走るんですよ。アレがイヤだったな。遅れるとズ〜ト立ちっぱなしでしたからね。

 かなり脱線しましたが本題へ戻ります。講演会で北海道の富良野市で開業している先生とお話ししてきました。富良野市は、新型インフルエンザの第一波は収束したとのことでした。今は、罹らなかった患者さん達への新型ワクチン接種で忙しいそうです。富良野市は、人口2〜3万人くらいだそうですが、周辺人口も入れると大体5万人くらいの医療圏になるそうです。小児科医は、病院が2件あって、それぞれに勤務医が2名ずつ常勤しており、開業医は1件です。つまり小児科医5人で5万人の医療圏を支えているわけです。
 
 その開業医の先生のお話です。1件しか開業医がいないので患者さんの集中ぶりは凄まじく、最高に混んだ週は、定点300人!(今のところ盛岡市の最高は45人ですから、盛岡市の6〜7倍の混み具合です。→定点については、【11月13日(金):嵐の前の静けさ?】を見て下さい)。1日の外来患者数は最も多かった日で、240人が二日間続いたそうです。午後6時で受け付け終了しても診療は午後10時までかかったそうです。私は、10月12日の休日当番医の時、202人診ましたが、平日で240人はスゴイですね。ぶったまげました。盛岡市の休日当番医の比ではないですね。

 でも、脳炎.脳症は一人もいなく、入院患者はみんな肺炎だったそうです。この辺が季節性のインフルエンザとの違いですね。幸い死亡者は一人もいなく、ホッとしたと言ってました。この話を聞いたら、盛岡市はまだ恵まれている方だなと思いましたよ。なんだかんだ言っても医者も病院も多いからね。

 さて、今日の「ネコの目」ワクチンじゃなくて新型ワクチンはどうなりましたかね。前倒しはどこまで行ったのかな。もうしょっちゅう変わるもんだから、誰がいつ接種できるのか訳がわからないですよね。いつの間にか自分の順番が終わっていたなんて事にもなりかねないような状況です。もうじき、誰でも早めに接種しましょうなんてなるんじゃないのかな。昨日も新型ワクチンについてのメールをいただきましたのでご紹介します。

S.Tさんからのお便り


よしだクリニック 吉田医師殿

 いつもお世話になっております。S.T 2歳児の母です。そして診察お疲れ様です。いつも吉田医師の診察室だより、拝見させていただいております。

 そこで、またまた新型インフルエンザワクチン予防接種の受診について確認したいことがあります。今回の基礎疾患を有する者についてはだいたいが理解できているつもりですが、まだまだ謎だらけで。。。

 家の息子はいつからのスケジュールに該当するのだろうと考えさせられてしまいます。家の息子は今年4月に熱性けいれんを起こし、入院治療(6日間)を行いました。救急車をよび、その日の輪番病院へ行き、そこでの処置中にも痙攣(拡散型とか言われました)があり、医大へ転院搬送されました。

 その後いろいろな検査を受け「熱性けいれん」と診断されて一安心した思いがあります。その時の熱の原因ははっきりしませんでした。

 突発性発疹でもなく、咳、鼻水もなく、ただただ高熱が5日間続いただけでした。それに加え、頭のCT、MRIの結果「脳室拡大」がみつかり+過成長ということで「SOTOS症候群の疑い」も見つかりました。こちらのSOTOSにつきましては、発達面に関しては良好です。(CT撮影しなかったら発見されなかったかもしれないです。)

 そこで確認です。まず、SOTOS症候群は基礎疾患ではないですよね?症候群ですので病気の範囲ではないような気がしています。また「熱性痙攣」も基礎疾患でもなく病気でもないですよね?

 ただ今回の小児の新型インフルエンザの犠牲者の方々の内訳で「熱性痙攣」の既往歴があった方の割合が意外に多いのがみうけられます。残念ながら盛岡の2歳の方も熱性痙攣の既往があったと伺っています。(新型インフルエンザ重症化と熱性痙攣との因果関係があるかどうかはわからないですが。。。)

 そこで吉田先生の基礎疾患とは『他の病気の原因となりうる状態(病態)」とし、具体的には、気管支喘息のような慢性呼吸器疾患や、日頃から病気がちの抵抗力が弱いお子さんが、この状態(基礎疾患)に該当する。』と定義されておりますが、家の息子は該当させていただけるのでしょうか?該当させていただけるのでしたら、接種したいと考えております。

 副作用も考えた上で親の切なる思いはなるべく早く接種させてあげたいです。(だからといって、予防を怠るわけではありません)

 お手すきのときでかまいませんので吉田先生のご回答をお待ちしております。




お便りありがとうございます。

 (土)、(日)と、東京で行われたアレルギーの講演会に出かけてきました。新型インフルエンザは全国あちこちで流行しているようですが、既に収束した地域もあったり、まだ、殆ど流行っていない地域もあったり、様々です。

 熱性けいれんは、あまり心配なかったようですね。いくら、心配ないものといっても、実際に眼の前でおこされると不安になりますよね。今冬は、ダイアップ座薬で予防されればよいでしょう。
 確かに、熱性けいれんは基礎疾患に入れがたいと思いますが、ご心配な気持ちはよくわかります。大体「基礎疾患」という言葉自体極めてあいまいです。なんとでも解釈できます。 
 
 新型ワクチンについては、基礎疾患だの、優先順位だの、前倒しだの、次から次へと方針が変更され、大変混乱しています。誰でも罹りたくないし、心配なわけですから、出来るだけ、公平に多くの人に接種したいと思っております。

 だからといって、公然と、「どなたでも心配な方はどうぞ」とは、言い難い状況でもあります。ですから、「基礎疾患」の意味を、少し広くおおざっぱに解釈し、あまり具体的な病名を入れずに、『気管支喘息のような慢性呼吸器疾患や、日頃から病気がちで、抵抗力が弱いお子さん』としました。こうすれば、多くのお子さんが接種できると思っています。いわば、大義名分です。ただ、決して誰にでもというわけではなく、親御さんが、自分の子どもが、「日頃から病気がちで、抵抗力が弱い」と思われた場合です。Sくんも当てはまると思いますので、是非接種しにいらして下さい。お待ちしていますよ。

2009年11月13日(金)
嵐の前の静けさ?

 先週は、超忙しい外来でしたけど、今週はとても空いています。不思議ですね。あれだけ受診したインフルエンザの患者さん達もう治っているでしょう。

 今日は、久々にインフルエンザ疑いのお子さんを病院に紹介しました。8才の小学生です。気管支喘息で今年の春まで治療していましたが、経過良好でしたので夏には治療終了していました。昨日からの発熱と久しぶりの喘息発作でチョット元気がないという感じでした。

 インフルエンザ検査は(−)でしたが、血中酸素濃度は92(正常値98〜99)と著しく低下しています。あまり強い発作には見えませんでしたが、《新型インフルエンザ〜呼吸不全》というパターンは要注意ですので、近くの入院受け入れ病院と相談し、入院が望ましいという結論になりましたので、紹介しました。

 新型は罹っても検査では(+)と出にくいので、症状や周囲の状況で診断した方がわかりやすいです。このお子さんもおそらくインフルエンザでしょう。早く良くなってくれるといいです。 

 インフルエンザのような感染症の流行の程度を表現する言葉に「定点当たり報告数」がありますが、「定点当たり報告数」の意味をご存知でしょうか。意味がわかるとマスコミ報道がより理解しやすくなりますので、簡単にご紹介します。 

 「定点当たり報告数」とは、ある感染症(この場合は、インフルエンザ)について、いくつかの医療機関を定め(これが定点)、そこからの報告数を合算し、報告した医療機関の数で割ったものです。週単位、月単位で表示します。

 具体的な例を挙げれば、例えば、11/9~11/16の間に、インフルエンザで受診した患者さんが、A診療所:20人、B診療所:40人、C病院:60人いたとすると、11/9~11/16の1週間のインフルエンザの「定点当たり報告数」は、(20+40+60)/3=40(人)となります。

 「総患者数」では人口の多いところと少ないところでは差が出てしまいますので、実際どちらの地域が流行の規模が大きいのか、わかりません。「定点当り報告数」は、ほかの地域や全国レベルでの流行状況を比較する場合などに便利です。報道では、「定点当り報告数」といったり、省略して単に「定点」と言ったりしています。

 では、早速最近の流行状況を「定点」で見てみましょう。沖縄では、定点が10人を超えた3週間後に定点46人となり、ピークを迎えました。盛岡市では、10/5~10/11:9人 10/12~10/18:18人 10/19~10/25:45人 10/26~11/1:38人 11/2~11/8:38人となっています。沖縄よりもハイペースで流行のピークを迎えたようですが、今週(11/9~11/16)は、かなり少なくなっていると思いますので、数字の上ではそろそろ収束しそうに見えます。でも、これからまた増えてくるんでしょうね。まだ罹ってない人の方が多いですからね。

 当院の周辺では一段落した新型インフルエンザですが、盛岡市内では、あちこちで流行しています。おそらく流行〜小休止〜流行の波を繰り返していくのでしょう。今日は久々に入院紹介しました。入院するようなお子さんが増えてくると、ちょっと心配になってきます。今週は【嵐の前の静けさ】かもしれませんね。

2009年11月12日(木)
新型 ワクチンについてのお問い合わせ

 新型ワクチンについて、多くの方からメールでのお問い合わせがあります。なるべくご返事するようにしていますが、同じような内容が多いので、代表的なご質問を掲載させて頂きます。

M.Sさんからのお便り


 吉田先生へ

 突然のメールで失礼いたします。いつもお世話になっているA.Sの母です。お疲れのところ申し訳ありません。

 新型インフルエンザの予防接種についてですが、Aが「基礎疾患を有する者(小学校4年生以上のうち最優先対象者)」に該当しているのか、11月16日以降に接種可能か教えていただけますか?

 今のところ状態はおちついていてそろそろお薬もなくなるころなので、もし接種可能であれば来週にでもお邪魔したいと考えています。まだ、ワクチンが十分足りていないのであれば、今回は私がお薬だけをいただきに参りたいと思います。

 お返事は急ぎません。よろしくおねがいいたします。




 お便りありがとうございます。

 新型ワクチンに関しては、いつもながらの厚労省の「現場丸投げ対策」に辟易しております。大体、基礎疾患などといっているものの、はっきりした定義がなく、誰から優先的に接種したらいいのかホントに困っております。心情的には、開院当初より当院をご利用して頂いているSさんのような方に優先的に接種したいと思っておりますが、そうもいきません。

 ワクチンは、こちらで希望した本数が納入されるわけではなく、さらに今度は、子どもは誰でもいいからサッサと接種しろなどと、都道府県に通知しており、その無責任さにあきれています。
 今のところ、岩手県は前倒しに出来るような状態ではなく、さしあたり、当初の予定どおりに接種していくようですが、この先、どうなるのか、わかったものではありません

 ところで、新型インフルエンザは、毎年流行る季節性インフルエンザと比べて、決して重症ではなく、既に流行が収束した南半球では、新型は、季節性の十分の一以下の致死率といわれています。確かに新型で重症化する人はいますが、その数は少なく、毎年流行る季節性インフルエンザと同じように考えていいように思います。この様な事は全く報道されず、やたらと不安をあおるようなことばかり報道しているマスコミにも責任があります。
 むしろ、この新型、つまり、豚インフルエンザを教訓として、強毒性鳥インフルエンザの対策をしっかりと立てなければならないのではないかと思っていますが、行政担当者は目の前のことで精一杯のようです。

 本題からはずれましたが、もし子どもの基礎疾患という言葉を医学的に厳密に定義するなら、「白血病のような小児ガン、治る見込みのない変性神経疾患・筋疾患、免疫不全による易感染性疾患、手術が必要な先天性心疾患、慢性腎疾患、膠原病、難治性の内分泌・代謝疾患、など」が該当すると思います。この様な病気は私達のような町の診療所で診ることは殆どありません。

 町医者レベルで、基礎疾患といえば、「定期的に治療している感染症に弱い病気」と言うことになるでしょう。そうしますと、気管支喘息くらいしか該当する疾患はありません。というわけで、「気管支喘息 等があり、現在、定期的に通院・治療をしている人」を優先接種としています。

 もう何百人も新型の患者さんを見ましたが、入院紹介したお子さんは二人だけです。この二人は兄弟で、兄は気管支喘息で治療していましたが、数年ぶりの発作でした。弟は過去に一度しか発作の既往がありませんでした。しかし、どちらもかなり重症な発作でしたので、これが新型による呼吸不全症状かと実感した次第です。
 この二人を除けば全て軽症です。タミフルもリレンザもいらないような子ばかりです。ただ、この二人のことがありますので、気管支喘息に関しては、決して油断は出来ないと思っています。それで、気管支喘息のある子を優先接種としました。

 誰でも接種したいと思って来院されますので、私は、少し広く考えて、基礎疾患とは「他の病気の原因となりうる状態(病態)」とし、具体的には、気管支喘息のような慢性呼吸器疾患や、日頃から病気がちの抵抗力が弱いお子さんが、この状態(基礎疾患)に該当する。と定義しました。

 喘息の既往のあるお子さん達でも接種できないと思っている場合が多いようですので、こちらから、過去に喘息の既往があれば、「ちょっと心配だから接種しましょうか」とお話ししています。
 
 とうわけで、AさんもYくんも接種希望されれば接種します。ただ、今のところ年令制限だけは、はっきりしていますので、小学校4年生以上は来週(11月16日以降)からです。
 先週、あまりにも希望者が殺到したので、いまは、新型の接種時間を決めています。先の読めない状況ですので、予告なしに時間は変更することがありますのでご了承下さい。

 新型ワクチン 接種時間帯(受付時間)
 (月):午後 2時〜5時
 (火):午前 9時30分〜11時
 (水):午後 1時30分〜3時30分
 (木):午後 1時30分〜5時

 もう少しで、季節性インフルエンザワクチンが終了しますので、そうしたら接種時間を増やします。

 なお、よけいなことかもしれませんが、国産新型ワクチンは、外国産(輸入)ワクチンよりもかなり弱いです。外国産は免疫増強剤を使用していますので、効果はかなりありそうです。しかし、副作用が心配です。国産は免疫増強剤などは使用してませんので、効果は弱いです、外国産と比べると「水みたいなもんだ」などといってる学者もいます。その分安全性は高いと思いますが、けっこうじんま疹などもみられており、あまりワクチンを頼りにするのも考えものです。とはいえ、現時点ではワクチンが一番有効と思われますので、接種する事をお勧めします。では、来週、お待ちしておりますよ。

2009年11月8日(日)
新型 ワクチン パニック?

 11月4日から、新型インフルエンザワクチン接種を開始しましたけど、ものすごい反響ですね。今は、基礎疾患を有する者(1才〜小学校3年生のうち最優先対象者)という人達に接種していますけど、基礎疾患の意味がわかりにくいですね。私は、基礎疾患とは「他の病気の原因となりうる状態(病態)」とし、具体的には、気管支喘息のような慢性呼吸器疾患や、日頃から病気がちの抵抗力が弱いお子さんが該当するというふうに解釈していますが、誰でも接種したいと思いますよね。そんなわけで、当院接種予定者に加え、他院からの依頼、希望者が多く、異常なほど多数殺到しております。

 そのため、患者さんの待ち時間が長くなり、特に一般診療で来院された患者さんに、大変ご迷惑をおかけするようになってきました。あまりの忙しさに、このままでは医療事故でも起きてしまいそうな状況になってきましたので、来週からしばらくの間、新型ワクチンは時間を決めて接種する事にしました。
 当院の季節性インフルエンザワクチンは大体8割くらい終わりました。おそらくあと2週間くらいで全て接種を終えると思います。そうしたら、新型ワクチンの接種時間を増やそうと思っていますが、果たして上手くいくかどうか・・・?

 ただでさえ大変なこの頃なのに、11月6日、厚労省は、殆ど全ての小児に11月中旬からの新型ワクチン接種を検討するように、各都道府県に通知しました。今、盛岡市内の小児科医は、多くの新型インフルエンザの患者を診察し、多くの小児に季節性インフルエンザワクチンの接種をしています。ここに新型ワクチンを小児全員に接種などということになれば、もうパンクしてしまいますね。

 ところで、新型ワクチンは、みんな何も疑問を持たずに接種を希望していますが、効果や副作用について考えてみたことありますか?
 ワクチンといえばすぐ、副作用を気にする人も多いけど、新型についてはあまり副作用の質問を受けません。新型ワクチンはご存知のように医療従事者から接種開始されましたが、その副作用を見てから、全国民に接種するという段取りですので、少し心配なところはあります。
 今のところ大きな副作用は報告されていないようですが、新型ワクチン接種1時間後に点滴治療を要する重症なじんま疹がみられた子もおり、100%安全とも言い難いようです。
 まだ使用されていませんが、輸入ワクチンは免疫増強剤を使用しており、国産ワクチンより効果は高いでしょうけど、副作用も強いかもしれません。国産ワクチンは、免疫増強剤などは使用していませんので、効果は劣るものの安全性は大丈夫と思っていましたが、そうでもないようですね・・・。

 南半球では既に流行は収束に近づいているようです。どのような流行状況であったか、まだ、詳細な報告はされていませんが、新型は季節性よりも10倍以上も致死率(感染患者のうち、その病気が原因で死亡する患者の割合)が低いそうです。また、タミフル、リレンザはいわゆるハイリスクの人にしか使われていません。
 南半球の国々では、日本のようにすぐ医療機関にかかることも出来ません。それでも致死率が10倍以上も低いのなら、案外「終わってみれば・・・。」というようなことになるかもしれません。とはいえ、いくら致死率が低くても、現実に重症者はいるわけですから、ワクチンは必要でしょう。
 
 厚労省は新型ワクチンによる健康被害には対応するとしていますが、誰彼が接種したから自分も接種するではなく、ご自身が、『ワクチンのプラス面(重症化を防ぐ)が、マイナス面(副作用)を上回る』と、考えた時に接種するようにして下さい。

 昨日は、3月に退職した職員の結婚式に出席してきました。5時からの披露宴でしたので、職員一同、この日は何とか、2時頃までには終了できるよう頑張りました。みんなで行う余興は練習の時間もないため、ブッツケ本番でしたが、何とかなるモンですね。あちこちでみんな酔っぱらっているからちょうどよかったみたいです。私も祝辞を頼まれましたが、何とか、スラスラと出来ました。ホッとして少し飲み過ぎて今朝は二日酔いでした。

 明日からまた、インフルエンザと格闘です。厳しい状況が続く中、最大限の努力をしておりますので、皆様にもご協力をお願いします。

2009年11月3日(火)
新型インフルエンザワクチン、明日から接種します。

 ついに盛岡市でも新型インフルエンザの犠牲者が出てしまいました。新聞報道でしか見てませんが、極めて短時間の出来事だったようです。ご冥福をお祈りします。
 軽症者が多いといっても、必ず重症者は見られるようになってきます。市民の動揺が広がる事が懸念されます。

 新型の重症例は脳炎・脳症よりも呼吸不全が多いようです。今のところ、乳幼児よりも圧倒的に学童が多いですので、年令による差があるのかもしれません。

 新型の患者さんをもうかなり診察しましたが、入院を紹介した患者さんは二人だけです。二人ともすごい喘息発作でした。一人目は発熱はなく、実に数年ぶりの発作でしたが、あまりにも血中酸素濃度が低下していましたので、入院紹介しました。二人目はこの子の弟さんでした。この子は始めから発熱があり、喘息発作がありましたので、インフルエンザを疑い、検査したら陽性でした。これがインフルエンザによる重症呼吸不全かと思いました。お兄さんが入院している病院に紹介しましたが、お兄さんも検査したらインフルエンザ陽性で、肺炎も合併していたとのことでした。

 私の新型重症例はこのお二人だけですので、インフルエンザによる重症呼吸不全について、あまり詳しいことはわかりませんが、以下のことが特徴のように思われました。

1.重症な気管支喘息発作が見られます。血中酸素濃度が著明に低下します。血中酸素濃度とは、血液中の酸素濃度のことです。通常は98〜99くらいありますが、喘息発作では低下します。95くらいでもかなり苦しいですが、80台まで低下していました。これは「苦しい」を通り越して「危険な状態」です。血中酸素濃度は、簡単に測る事ができますので、早期に重症度を確認することができます。
2.インフルエンザといえば、突然の発熱ですが、必ずしも発熱を伴わない事もありそうです。
3.肺炎や気管支炎、それも直接インフルエンザが感染するものだけでなく、細菌性肺炎やマイコプラズマ肺炎などの合併も多いようです。

 今のところ、この程度のことしかわかりませんが、重症呼吸不全は、早い段階で診断できますので、呼吸が苦しそうと思ったら早めの受診が必要です。新型は『熱より呼吸』が重視されそうです。

 やっと、新型ワクチン接種ができます。まだ、予定の半分しかありませんが、明朝残りの半分が入荷します。それでも多分希望者全員の分はないと思います。優先順位を決めることには抵抗がありますが、数が限られている以上やむを得ないですね。新型 インフルエンザ ワクチン 接種要項は、院内にも掲示しました。対象になるお子さんは大勢いますので、予約は無理です。当分の間、来院順に接種します。

 最優先者は、やはり気管支喘息の患者さん達と思っていますが、健康に見えても感染すれば重症化することもあるわけですから、全ての人に接種してあげたいです。しばらく頭の痛い日が続きそうです・・・。

2009年10月30日(金)
新型インフルエンザワクチン

 本日は、M.Oさんから、新型インフルエンザワクチンについてのお問い合わせがありましたので掲載させて頂きます。

M.Oさんからの



よしだクリニック 吉田先生へ
 いつも大変お世話になっております。

 最近、やっと診察で『あ〜ん(^O^)』が出来るようになった、M.Oの母でございます。インフルエンザ流行時期の連日の診察、大変お疲れ様でございます。

 一点ご質問があり、初めてメールさせて頂きました。最近、よくマスコミで『新型インフルエンザ予防接種の予約』的なものを取り上げられておりますが、今現在よしだクリニックさんで《予約》は受け付けていらっしゃるのでしょうか(今後受け付けるご予定はおありでしたでしょうか)?

 また、優先順位的なところですが、実際自分の子供がどの程度の順位にいるのかがいまいち解らず、予防接種が開始になった際に(季節性インフルエンザ予防接種のように)駆け込み(予約無し)での接種は可能なのでしょうか?

 お忙しいところ、大変恐縮ではございますが、お答えを頂戴出来ますと幸いに存じます。





 お便りありがとうございます。

 早く、新型ワクチン接種の要項を掲示したいと思っておりますが、いろいろ制約も多く、まだ何一つ決めることができないでいます。ちまたでは、11月2日から接種できるように言われていますが、本日(10月30日)になっても新型ワクチンは納入されていません。問屋までは配給されているようですが、県の指示がないと出荷できないそうです。優先順位は岩手県のホームページにも記載されていますが、下の図のような案が示されています。


 

この予定では、11月2日から、妊婦、基礎疾患を有するもの(1才〜小学校3年生のうち最優先対象者)が、接種できることになっています。先週、岩手県からこれらの人数について問い合わせがありました。妊婦さんについては、当院に何人接種しにくるのか全くわかりません(答えようがないです)。基礎疾患を有するもの(1才〜小学校3年生のうち最優先対象者)については、当院の場合、殆ど気管支喘息ですので、【現在、気管支喘息で定期的に通院し治療をしている人】を対象としました。かなりの人数になりますが、この人数が2回接種する分のワクチンが必要と言うことを県に報告しています。

 新型ワクチンは1ヶ月に2回配給されるようです。つぎは、11月16日から、基礎疾患を有するもの(小学校4年生以上のうち最優先対象者)(1才〜小学校3年生のうち最優先対象者以外)の接種が始まりますが、この最優先対象者以外の意味がよくわかりません。県に説明を求めましたが、あまり明快な解答ではなく、どうも混乱しそうな状況です。今は、基礎疾患を有するもの(小学校4年生以上のうち最優先対象者)とは、この年令で、【現在、気管支喘息で定期的に通院し治療をしている人】。基礎疾患を有するもの(1才〜小学校3年生のうち最優先対象者以外)とは、この年令で、【気管支喘息はあるが、現在、定期的に受診・治療していない人】。かな?と解釈しておりますが、これでいいのかどうか、まだはっきり決めかねています。

 新型ワクチンは各県の人口比に応じた本数しか配給されてきませんので、おそらく希望どおりにはそろえることが出来ないと思います。何本納入されるか全くわかりませんので、予約などはとうてい無理と思っています。結局、来院順に接種することになると思いますが、「なぜ、うちの子には接種してくれないんだ」などというクレームがたくさん聴かれそうです。とても頭が痛いです。接種が始まればおそらく予想外のとんでもないことが起きてくると思いますが、その場に応じて臨機応変に対処していくしかないと思っています。と言うわけで、現時点では、予定は未定です。とにかくワクチンが納入されないことには始まりません。入荷次第、院内に掲示したり、ホームページでお知らせするように致します。

2009年10月28日(水)
私も、そう思います。

 インフルエンザは、そこそこ流行してますね。今日の岩手日報夕刊の『声の欄』に、ちょっと興味のある投書がありました。ご覧になった方も多いでしょうね。【インフル治療 矛盾する対応】という表題です。「明らかにインフルエンザと思われても、検査が陰性だと薬をだしてもらえない。周囲の流行状況や、本人の症状からインフルエンザと診断できるはずだから、検査にとらわれず、医師の判断(それと保護者の同意)で、薬を処方できないものか」という内容でした。もっともだよね〜。今時こんな医者いるのかな。この投書をした人の方がよっぽど医者らしいよ。なんて言ったら同業者から怒られるかな。(最近やや疲労気味なので、夜になると抑制がとれて、ついつい本音が連発しそうになります。悪しからず。)
 はっきりインフルエンザかどうかわからなくて、タミフル処方して、マンションから飛び降りでもされたら大変なんて思って薬を出せないんでしょうか。高いところに行かなければ心配ないのにね。

 大体にして、なんで、医者も患者も検査、検査なんだろね。いくらインフルエンザにかかっても検査は100%陽性にならないんだから、もっと、自分(医師として)の技量を信じて診断すべきですよね。それにそのうち検査キットはなくなるでしょうし、今の倍くらいの流行になればもう検査なしで薬をだすようになりますよ。

 インフルエンザの検査キットが発売されたのは平成11年(1999年)です。それまでは、周囲の流行状況や、本人の症状からインフルエンザと診断していました。早い話、平成11年以後に医師になった人やインフルエンザにかかった人は「始めに検査ありき」なのかもしれませんね。私は昭和の時代に医師になっていますので、検査もタミフル・リレンザもなんにもない時代を経験しています(当院の婦長もそうですよ)。とても大変でしたよ〜。それに比べたら、今はなんと恵まれていることか、むしろ、かえって検査に頼ってしまい、医師本来の技量を発揮できなくなってしまっているようにも思えます。

 とはいえ、インフルエンザを心配して受診する患者さん達、一目インフルエンザとわかるような(私の診断では)お子さんでも、「周囲の流行状況や、本人の症状からインフルエンザと診断できますよ。でも検査するっか」と聞けば、みんな、検査希望しますっけね。というわけで、希望者は全員検査してますよ。何回もいうように新型は陽性率が低いですから、罹っても陰性のお子さんは多いです。検査して、「陰性でした。」と言った時、「エッ??」という顔になるのはなぜ、私の見立てより検査が信用されているコトに、ちょっと腹ただしさを覚えますね。そこで、おもむろに「インフルエンザにかかっても検査は100%陽性にならない・・・」というお話しをして、薬をだして、一件落着、親御さんはニコニコして帰ります。(インフルエンザにかかってるんだけどね)これがこの頃のパターンです。今のところ、重症者もいないので、こんな感じでリラックスした外来ですけど、ひとたび重症が出れば大騒ぎでしょうね。そうなると、「本当に薬だけで大丈夫か」ナンテ詰問されそう・・・。心配は絶えません。

 ところで、新型インフルエンザワクチン、ホントに来週から接種できるのかしら、まだ入荷していません。

2009年10月27日(火)
新型インフルエンザワクチン

 この頃新型インフルエンザの患者さんが多く、忙しい日々を過ごしています。私事ではありますが、一昨日(25日)まで、プライベートな仕事が立て込んでおり、殆どホームページの更新をしていませんでした。やっと一段落しましたので、近況やら、新型インフルエンザワクチンの予定などをご紹介したいと思います。プライベートな仕事についてはそのうちお話しする機会があると思いますので、今は、さておき・・・。です。

 予想どおり(?)10月中旬から新型インフルエンザが本格的に流行してきましたね。それでも、一生懸命学級(学校)閉鎖を繰り返しているおかげで、一気に患者さんが押し寄せることもなく、まだ、何とか、医療機関も機能しています。マスコミは大流行なんていってますけど、この程度はまだまだ中流行くらいですよ。当院もまだ、少し余裕があります。小中学校のお子さん達は今年は大幅に冬休みや春休みが少なくなるんじゃないかなと思いますけどしかたがないですね。学校の先生も大変です。

 やや(?)猛烈な勢いで広がっている新型インフルエンザですが、依然として小中学生が多いです。やっと、幼稚園、保育園児にも広がり始めてきたかなという感じですが、今週は高校生がけっこう受診してきます。少しずつ拡大していますね。

 ところで新型、新型と騒がしいですが、盛岡市の新型インフルエンザは今のところあまり重症者はいないようです。治りも早く1日〜2日で解熱する場合が殆どのようです。とはいえ、沖縄や関東方面を見ますとかなり重症な患者さんもいますので油断禁物です。

 この頃、へんてこりんな問い合わせが多いですね。「子どもがインフルエンザになった。自分(親)もそうだと思うから薬だけくれ」とか、「熱が上がって何時間してから行けば検査してくれるんだ」なんて言う電話がありましたよ。なんのこっちゃ?実際に診察しなきゃインフルエンザかどうかわかんないでしょ。薬だけだして全く別の病気ならどうすんだかね。それから、検査しに受診するんじゃないでしょ。診察を受けに受診するんでしょ。検査は必要に応じて行いますが、でも、検査しないと気が済まない人が多いから、希望者にはほぼ全員検査してますよ。決して良いこととは思えないけど、それで納得できればいいのかもしれないですね。発熱後の時間など気にしないで受診して下さい。ただし受付時間厳守ですよ。

 いよいよというか、やっとというか、新型インフルエンザワクチンの接種が始まりました。まずは医療従事者でためしてみて、安全なら国民全員へ接種ということのようですね。最初は医療従事者を最優先にするなんていうから、ずいぶん気前がいいんだなと思いましたよ。でも、やっぱり安全性の確認が少し足りなかったのでしょうかね。早い話が一番文句がでない医療従事者で副作用チェックするということのようです。こういうコトが見え見えなので接種することに少しためらいました。また、スタッフ全員に接種できるだけの本数が配給されてはいません。2〜3日考えてから、結局は接種しましたが、今のところ何も副作用はありません。(あったら大変だよね。)
 
 11月2日から妊婦さんや基礎疾患を持った人から優先的に接種が始まりますが、今、その準備に追われてます。県からは、各医療機関で接種予定の妊婦数及び、基礎疾患を有する患者数について人数を報告するよう通達がありました。妊婦さんが何人当院で接種するか全くわかりませんよね。基礎疾患は当院の場合、殆ど気管支喘息ですから、「現在、定期的に受診して治療中の人」を最優先と考えています。そして、この人数を報告しましたが、報告した全員分のワクチンが配給されるわけでもないようです。新型ワクチンは各県ごとに人口比に応じて配給されるようですので、おそらく全員分は確保できないでしょう。接種回数も1回だか、2回だか、まだ、ゴチャゴチャもめているようですし、他のワクチン(例えば、季節性インフルエンザ)との同時接種も、「医師が必要と認めれば・・・。」という相変わらず現場丸投げの言い回しですので、同時接種していいんだか、悪いんだか、はっきりしません。接種希望者はたくさんいると思いますので大いに混乱しそうです。

 何本配給されてくるのか今のところ全く不明です。本数がわかりしだい、具体的な接種方法を院内に掲示したり、ホームページに掲載しますので、今しばらくお待ち下さい。

 季節性インフルエンザワクチンを接種しながら、新型インフルエンザ患者を診療し、さらに新型インフルエンザワクチンも接種開始、いずれ、季節性インフルエンザも流行。そのうち、A型インフルエンザに罹ったけど新型か季節性かどっちかわからない。どっちか罹ってない方のワクチンをしたいけどわからない。ナンテコトになりそうです。せめて、季節性インフルエンザワクチンだけでも早めに接種しておいた方がよいです。

2009年10月12日(月)
とても疲れました。

 10日は夜間診療所、11日は休日当番医と、とても忙しい二日間でした。夜間診療所は、10月10日からしばらくの間、(土)、(日)は小児科医が二名勤務することになりました。新型インフルエンザ大流行に対する診療体制の強化です。二名のうち一名は通常の担当医として7時〜11時まで勤務しますが、一名はヘルパー(お手伝い)として原則7時〜9時までで、忙しいようであれば9時以後も診療を手伝うというものです。
 
 長い夜間診療所の歴史でも小児科医が二人で勤務することは今までなかったことだそうです。この記念すべきヘルパー第1号として、10日、夜間診療所に行って来ました。通常の担当医は、松園の臼井先生でした。二人で診療すると早いですね。これなら待ち時間も少なくていいかなと思いきや?どうも待合いの人数が少なくならない。でもカルテもあまり増えてこない?なぜ?診療する医師は小児科二人と内科一人、事務員は二人で、受け付け〜カルテ作り〜会計、これは、ちょっと大変です。もう一台レセコンがほしいですね。そう、事務員さんももう一人増やしてほしいです。せっかく小児科医が二人出勤しているんだから、もうちょっと環境整備してもらえば、これからもっと増えて来るであろう新型インフルエンザにも何とか対処できるかな?

 10時頃まで診療しましたよ。二人で小児科の患者さん60人くらい診ましたけど、殆どがインフルエンザと思われる発熱の患者さんでした。重症なお子さんはいませんでしたし、土曜日でこのくらいの人数なら、明日の当番医もそんなに混まないだろうなと思いながら帰途につきました。ところが・・・。

 11日は混みましたね。もうみんな、熱、熱、熱です。まだ、小中学生が中心ですが、保育園、幼稚園にもインフルエンザは侵出してきました。いよいよ本格的大流行が始まりそうです。

 みんな、熱が上がると心配ですよね。インフルエンザかなと思ってすぐ受診しますよね。でも「熱が上がってから時間が経たないと、検査してもわからない」なんて言われたら、ちょっとガッカリですよね。みんな検査しないとわからないと思ってるんでしょう?そんなことないですよ。検査は参考程度です。熱が上がって何時間経っても(+)にならない人もいるんですよ。それに新型インフルエンザは季節性インフルエンザよりも陽性率が低く、60%〜70%くらいともいわれています。つまり、実際に新型に罹っていても、時間に関係なく、10人中6人〜7人しか(+)にならないということです。

 何度もいうようにインフルエンザは、症状の強さ、周囲の流行状況などから診断すべきです。昨日インフルエンザ検査して、(+)は三分の一、残りの三分の二は(−)でした。でも(−)の半分はインフルエンザと診断して薬をだしました。みんな笑顔(?)で帰られましたね。
 
 先日、地方新聞の夕刊に「インフルエンザ流行時などにはもっと当番医を増やしてほしい」というような投書がありました。ごもっともと思います。よくわかります。
 昨日は私は昼食も食べず、缶コーヒー二本で、約10時間ぶっ続けで診療しました。最後は声が枯れてしまいました。私自身もう一件当番医がいてほしいと思いましたよ。でも、盛岡市の小児科医は、夜も一年365日無休の夜間診療所で診療していますし、重症患者のための二次輪番病院も毎日フル活動しています。盛岡市は他の市町村と比べるとすごく恵まれているんですよ。目一杯頑張っていますので、これ以上を望まれても少し無理のように思います。ご理解して頂きたいです。
 
 今のところ盛岡市内のインフルエンザは軽症です。すぐ治る人が多いです。しかし、他県ではかなり重症者も見られてますので、決して油断できません。これから、インフルエンザが大流行してくれば、どのような体制になるかわかりませんが、自分自身生身の体ですので、どんなに頑張ってみても限界はあります。過労でダウンすることがあるかもしれませんが、その時は休診しますので、「ゴメンなさい」です。今日はゆっくり休みましたから、明日からまた頑張ります。

2009年10月10日(土)
いよいよ、インフルエンザ流行

 今週になって、だいぶインフルエンザが増えてきました。私は仙北小学校の校医をしていますが、7日に学校保健委員会がありました。教職員、PTA、学校医が、児童の健康について話し合う場です。今回の話題の中心はやはり、新型インフルエンザです。7日現在、仙北小学校819人中48人がインフルエンザに罹ったそうです。入院するような重症な子はいないそうです。

 8月25日に最初の患者さんを診てから、1ヶ月半くらいたちます。新型は感染力が強いとか、重症が多いとか言われていますが、今のところ当院周辺では、そのような状況になっていないようです。

 現在、盛岡市の学級(学校)閉鎖の基準は、1クラスの1割罹患で学級閉鎖、複数学級閉鎖で学年閉鎖、複数学年閉鎖で学校閉鎖。です。これだとアッという間に学級閉鎖になってしまいますが、そのおかげであまり感染が拡大していないように思います。ちょくちょく閉鎖すると勉強に遅れが出てしまうかもしれません。教職員の方々も大変なことと思います。しかし、まだ、大流行に達していないのはこのような努力があるからだと思います。

 いつのまにか、「熱が上がったら、すぐ受診」というパターンが定着してしまいましたね。でも、受診すると「熱が上がってから時間が経たないと、検査してもわからない」なんて言われませんか。これも定着したパターンですね。で、どうなるかというと、「明日また受診して下さい」でしょ。仕方ないなと思いますけど、これでいいのかな?と、最近疑問を持つようになりました。もっとも、自分もこのパターンで診療していますので、なんと言ったらいいか。

 今から13年前、まだ、検査キットもタミフルもない頃です。このシーズンはインフルエンザが大流行しました。罹患児のピークは2才で、日本全国で、脳症が200人以上も発症したときです。当時、熱が上がって、ぐったりして、目がうつろになった子達を診察しながら、「多分インフルエンザだろう。効く薬があれば何でも処方したいけどなにもない・・・。」と、何度思ったことか。今は、検査も薬もあります。ずいぶん医療も進歩したものと思います。しかし、あまりに検査、薬に頼りすぎているような気もします。

 「検査(−)だから、今のところインフルエンザじゃないので、かぜ薬を処方、熱が続けばまた受診」これでいいのかな?すべて、検査に責任を負わせているように思ってしまいます。やはり、医師の眼で診て、医師の責任のもとに診断すべきでしょう。検査は参考程度です。大体、インフルエンザにかかっても100%検査は(+)にはなりません。特に新型は陽性率が低いともいわれています。

 今日も、発熱してすぐ受診したお子さんがたくさんいました。当然検査は(−)です。しかし、症状の強さ、周囲の流行状況などから、インフルエンザと診断して、薬をだしました。「検査(−)だけど、インフルエンザと思うので、薬を処方。もし熱が下がらなければ、インフルエンザではないかもしれないので、また受診」この方がよっぽど一般的じゃないでしょうか。

 ところで、検査(−)で薬をだすと、すぐ、「異常行動は大丈夫ですか」と心配されますね。私自身はあまり異常行動は気にしていませんけどね・・・。
 タミフルと異常行動については、こちらタミフルと異常行動と耐性ウイルス をご覧になって下さい。これ以後新しい報告は何もありません。厚労省は『新型インフルエンザに対しては、タミフルを第1選択剤』とするようにいっていますが、『タミフルの10代未成年での使用を原則中止』という方針も変えていません。
 では、新型インフルエンザにかかった10代未成年には、タミフルを使ってもいいの、悪いの?いつもながらのあいまいな通達には閉口してしまいます。

 何人ものインフルエンザの患者さんを見てきましたが、異常行動のうち、「転落・飛び降り」は、さすがに見たことがありません。「転落・飛び降り」の殆どは、マンションです。マンションのような高層建築がなかった頃には「転落・飛び降り」は、なかったことを思うと、「転落・飛び降り」は、高い場所で、熱性せんもうや脳症の症状が出たと考えてもいいのではないでしょうか。まだ、はっきり結論が出てはいませんが、タミフルと異常行動の関連は少ないと思っています。

 今日は、これから、夜間診療所勤務です。明日は休日当番医です。私は忙しいのはあまり苦になりません。患者さんとの間に上手くコミュニケーションが取れない時に、ドッと疲れがでてしまいます。インフルエンザが心配でしたら、検査しますよ。でも検査は参考程度ですよ。今晩から明日にかけて、あまり疲れないように頑張ります。